石像に感じるロマンチシズム
どんな悪人も、世界を救った英雄も同様に年を取るとみな死ぬ。生物にとって死は不可避である。しかし石だけは数万年残り続ける。
人類は太古から皆それを知っているから、英雄を石像として彫像し後世まで残すことにした。生物はたった100年も生き続けることはできないが、石は無機物だからいつまでも残り続ける。
石像を掘るには大変な労力がいる。今よりも技術的に発展していない時代ではそれは今以上にずっと大変だったはずだ。どこかのパーツが思い通りの形にならなければすべてやり直し。気の遠くなるような作業。それほどまでの労力をかけてまで後世に伝えたい、それほどまでの思いを持つまでに至る人物とはいったい何なのか。
本来100年も生き続けられない生命を、数万年生かすために石像にする。この思いをロマンチックであると感じる。今俺が見ているこの石像は、過去の人々が生物の枠を超えてまで生かしたかった存在なのだと。